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不等式の性質は、高校数学Ⅰの基礎中の基礎です。
今後勉強する 一次不等式・連立不等式・二次不等式 etc... などを理解するうえで、とても重要な単元となります。
本記事では、前半で不等式の4つの性質を、後半から試験でよく見る5つの練習問題を解説しています。
この1記事だけで、不等式の性質をばっちりマスターできるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を書いている私は、受験指導歴8年の現役塾講師です。
出身は岩手県で、立命館大学に進学・卒業した後、大手塾講師としてこれまでに200人以上の中高生の勉強相談に答えてきました。
A>B という不等式があるとします。
この時、Aのことを左辺。Bのことを右辺。左辺と右辺を合わせて両辺と呼びます。
不等式の性質をわかりやすく解説|高校数学Ⅰ
不等式の性質をまとめると、全部で4つ。
これらさえ頭に入れておけば、ほとんどの問題に対応できます。
ここからは、4つの性質を、例題を解きながら1つずつ理解していきましょう
- 不等式の性質まとめ
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両辺の大小関係を示す性質
『AがBより小さく、BがCより小さいとき、AはCより大きい』
ということを示した性質です。
つまりは、塩パンがカップラーメンより安く、カップラーメンがロールケーキよりも安いとき、ロールケーキは塩パンより高い、ということ。
塩パン<カップラーメン<ロールケーキ
一見当たり前で、重要ではない性質のように見えますが、
$A<B<Cより、A<Cだから....$
といった解法の流れは、不等式の文章題でよく利用しますので、油断せずしっかりとインプット(記憶)しましょう!
- 『AがBより小さく、BがCより小さいとき、AはCより大きい』
$A<B, B<C$ ならば $A<C$
不等式の加法の性質|両辺に同じ数を足す
『両辺に同じ数を足しても不等号の向きは変わらない』
ということを示した性質です。
急に「塩パン」と「カップラーメン」を食べたくなったあなたは、母親と近所のスーパーにやってきました。
この時、両者の価格の大小関係は次の通りです。
塩パン < カップラーメン
そして、塩パンとカップラーメンを買い物かごに入れたあなたは、レジに向かう途中で大好物の「ロールケーキ」に遭遇します。
ロールケーキも買い物かごに入れようとしたあなたですが、それを静止する母。
さてこのとき、より安い組み合わせはどちらでしょうか?
不等式の性質を利用すれば、合計価格を計算しなくても分かります。
塩パン < カップラーメン
ここに、それぞれロールケーキが加わるので
塩パン+ロールケーキ < カップラーメン+ロールケーキ
( $100$円+$300$円 < $200$円+$300$円 )
つまり、母親の機嫌をそこねないためには、より安価な「塩パン+ロールケーキ」の組み合わせを選ぶべきだといえますね。
- 『両辺に同じ数を足しても不等号の向き(大小関係)は変わらない』
$A<B$ ならば $A+C<B+C$
不等式の減法の性質|両辺から同じ数を引く
『両辺から同じ数を引いても不等号の向きは変わらない』
ということを示した性質です。
先ほどの「塩パン」と「カップラーメン」と「ロールケーキ」の話に戻ります。
塩パン+ロールケーキ < カップラーメン+ロールケーキ
どちらかというと、塩パンよりもカップラーメンが食べたいあなたは、ある妙案を思いつきます。
ポイントカードです。
カップラーメン + ロールケーキ ― ポイントカード
確かに、ポイントカードを使うことで、多少高い組み合わせを選んでも、価格は抑えられますね。
しかし、母親はこういいます。
塩パン+ロールケーキ―ポイント
∧
カップラーメン+ロールケーキ―ポイント
塩パン・カップラーメン・ロールケーキ・ポイントの値をそれぞれ、100円・200円・300円・100円とすると、
$100$円 + $300$円 - $100$円
∧
$200$円 + $300$円 - $100$円
そう、この母親理論こそが、不等式の第三の性質。
もともと同じ大小関係(不等号)の両辺から、同じ数を引いたとしても、不等号の向きは変わりません。
- 『両辺から同じ数を引いても不等号の向き(大小関係)は変わらない』
$A<B$ ならば $A-C<B-C$
不等式の乗法・除法の性質|正の数 編
『両辺に正の数を掛けても割っても、不等号の向きは変わらない』
ということを示した性質です。
この性質も、塩パンとカップラーメンで例えると簡単に理解可能です。
塩パン < カップラーメン
例えば、食いしん坊なあなたは、塩パンとカップラーメンのどちらかを2つずつ買いたいとします。
塩パン × $2$ < カップラーメン × $2$
塩パン・カップラーメンの値を、それぞれ100円・200円とすると、
$100$円× $2$ < $200$円× $2$
この通り、不等号の向きは変わりませんね。
両辺に同じ正の数を掛けたとしても、不等号の向きは絶対に変わりません。
この性質は「正の数」を掛ける場合に限って、必ず成立します。
例えば、$\frac{1}{2}$ や $8.3$ といった、分数・少数を掛けたとしても、両者の大小関係(不等号)は変わりません。
塩パン × $\frac{1}{2}$ < カップラーメン ×$\frac{1}{2}$
塩パン × $0.83$ < カップラーメン ×$0.83$
- 『両辺に同じ正の数を掛けても割っても、不等号の向き(大小関係)は変わらない』
$A<B, C>0$ ならば $A×C<B×C$
不等式の乗法・除法の性質|負の数 編
『両辺に負の数を掛けたり割ったりすると不等号の向きが逆になる』
ということを示した性質です。
数字増えるほど大きくなる正の数に対し、負の数は数字が増えるほど数としては小さくなります。
- 正の数:1, 2, 3, 4, 5........102, 103 ・・・(どんどん増えていく)
- 負の数:-1, -2, -3, -4, -5.......-102, -103 ・・・(どんどん減っていく)
そのため、もともとは A<B という大小関係も、負の数を掛けたり割ったりすることで逆転してしまうわけです。
$100 < 500$
↓
$-100 > -500$
「負の数の掛け算・割り算」は、不等式の単元において最も重要なポイントの一つ。
性質を機械的に覚えるのではなく、しっかりと数字の大小を確認しつつ、問題を丁寧に解いていきましょう。
- 『両辺に同じ負の数を掛けたり割ったりすると、不等号の向き(大小関係)が逆転する』
$A<B, C<0$ ならば $A×C>B×C$
2つの不等式を足し合わせたときの性質
『2つの不等式を足し合わせてもよい』
ということを示した性質です。
少し難しく見える性質ですが、順序だてて考えていくと簡単に理解できますよ。
まずは、$A<X<B$ の各辺に $Y$ を足します
$A+Y<X+Y<B+Y$ ・・・Ⓐ
次に、$C<Y$ の両辺に $A$ を、$Y<D$ の両辺に $B$ を足します
$A+C<A+Y$・・・Ⓑ
$B+Y<B+D$・・・Ⓒ
最後に、$A,B,C$ のそれぞれの大小関係を不等式で表します
A+C<A+Y<X+Y<B+Y<B+D
これによって、 $A+C<X+Y<B+D$ の性質が成り立つことが分かります。
2つの不等式を足したり引いたりする問題は、試験で頻出する応用問題ですので、しっかりと性質を理解しましょう。。。。
- 『2つの不等式を足し合わせてもよい』
$A<X<B,C<Y<D$ ならば $A+C<X+Y<B+D$
不等式の基礎問題とその解き方|高校数学Ⅰ
ここからは実際に問題を解きつつ、不等式の性質を脳にインプット(定着)させていきましょう。
今回用意した問題は以下の5つ。
- 1.$-2x-7>5$ を解け
- 2.$x+0.5≧0.2x+0.3$ をとけ
- 3.$3<5+x$ と $0≦x-2$ を、同時に満たす$x$の値の範囲を求めよ
- 4.$-1<x<2$ であるとき、$x+3$ の取りうる値の範囲を求めよ
- 5.$-1<x<2, 1<y<3$ であるとき、$5x-3y$ の取りうる値の範囲を求めよ
ここで一端スマホをおいて、お手元に紙とペンを用意しつつ、問題を解いてみてください。
- 不等式の性質を理解できる問題まとめ
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1.基礎的な不等式の解き方
※クリックすると答えが表示されます↑
【解法の流れ】
「左辺はx、右辺は数字」といった形を作り、不等式の性質(負の数の割り算)に注意して不等式を解きましょう。
左辺を $x$ だけにするため、両辺に $7$ を足して
$-2x-7+7>5+7$
$-2x>12$
両辺を $-2$ で割って
$x<-6$
※負の数で割ったため不等号が逆転することに注意
- 利用している不等式の性質
① $a<b$ ならば $a+c<b+c$
両辺に同じ数を足しても、不等号の向きは変わらない
② $a<b$, $c<0$ ならば $\frac{a}{c}>\frac{b}{c}$
両辺を負の数で割ると、不等号の向きが変わる
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2.少数を含む不等式の解き方
※クリックすると答えが表示されます↑
【解法の流れ】
少数や分数の問題でも、難しく考える必要はありません。
やるべきことは先ほどと同じ、「左辺は$x$、右辺は数字」といった形を作り、不等式の性質に気を配りつつ不等式を解きましょう。
左辺を $x$ だけにするため、両辺に $-0.5$ と $-0.2x$ を足し
x+0.5-0.5-0.2x≧0.2x+0.3-0.5-0.2x
$x-0.2x≧0.3-0.5$
$0.8x≧-0.2$
両辺を $0.8$ で割ると
$x≧-0.25$
※正の数で割っても、不等号は変わらない
- 利用している不等式の性質
① $a<b$ ならば $a-c<b-c$
両辺から同じ数を引いても、不等号の向きは変わらない
② $a<b$, $c>0$ ならば $\frac{a}{c}<\frac{b}{c}$
両辺を正の数で割っても、不等号の向きは変わらない。
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3.xの値の範囲を求める問題の解き方(その①)
※クリックすると答えが表示されます↑
【解法の流れ】
まずは、それぞれの不等式をいつも通りに解き、$x$の値の範囲を$2$つ導き出します。
続いて、導き出した$2$つの「範囲」を両方満たす$x$の値の範囲を求めれば完了です。
※不安な時は、数直線を引いてみよう!
$3<5+x$ の両辺に $-5$ を足して
$3-5<5+x-5$
$-2<x$
$0≦x-2$ の両辺に $2$ を足して
$0+2≦x-2+2$
$2≦x$
$-2<x$ と $2≦x$ の共通範囲は、 $2≦x$ だから、答えは
$2≦x$
- 利用している不等式の性質
① $a<b$ ならば $a-c<b-c$
両辺から同じ数を引いても、不等号の向きは変わらない
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4.xの値の範囲を求める問題の解き方(その②)
※クリックすると答えが表示されます↑
【解法の流れ】
不等式の性質(両辺に同じ数を足す)を使って、各辺に $3$ を足しつつ、 $x+3$ の値の範囲を導きます。
不等式の性質を使い、 $-1<x<2$ の各辺に $3$ を足すと
$-1+3<x+3<2+3$
$2<x+3<5$
- 利用している不等式の性質
① $a<b$ ならば $a+c<b+c$
両辺に同じ数を足しても、不等号の向きは変わらない
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5.2つの不等式を組み合わせる問題の解き方
※クリックすると答えが表示されます↑
【解法の流れ】
$-1<x<2$ と $1<y<3$ をあらかじめ”使いやすい形”に加工し、最後にⒶⒷの各辺を足し算するだけで答えが出るような状況を作ります。
$-1<x<2$ の各辺に $5$ を掛けて
$-5<5x<10$ ・・・Ⓐ
※正の数を掛けても、不等号は変わらない
$1<y<3$ の各辺に $-3$ を掛けて
$-3>-3y>-9$
$-9<-3y<-3$ ・・・Ⓑ
※負の数を掛けたため、不等号が逆転する
ⒶとⒷの各辺を加えて
$-14<5x-3y<7$
- 利用している不等式の性質
① $a<b, c>0$ ならば $ac<bc, \frac{a}{c}<\frac{b}{c}$
両辺に正の数を掛けても割っても、不等号の向きは変わらない。
②$a<b, c<0$ ならば $ac>bc, \frac{a}{c}>\frac{b}{c}$
両辺に負の数を掛けたり割ったりすると、不等号の向きが逆転する。
③ $a<x<b, c<y<d$ ならば $a+c<x+y<c+d$
2つの不等式を足し合わせたときの性質
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高校数学の不等式の性質|まとめ
以上で不等式の性質についての解説は終了です。
まだ練習問題を解いていない方は、ぜひチャレンジをどうぞ!
》リターン:不等式の性質の練習問題
すでに問題を解き終わった方は、性質を再度確認してからブラウザを閉じ、次の単元に移りましょう!
》リターン:不等式の性質まとめ
それではこれにて!