
「アナログ」と「デジタル」と聞くと、どういった印象を抱くだろう?
アナログは、古い、あいまい、劣化する。
デジタルは、新しい、正確、劣化しない。といったところか。
今日は「アナログとデジタルの違い」について考えてみる。なんとなくイメージできるけど、いざ「説明しろ」といわれると「むむっ」となってしまう。
最後まで読めば、アナログやデジタルに対する今のイメージが、少しだけ、変わると思う。
アナログとデジタルの違いは「表し方」
まずは結論から述べる。アナログとデジタルの違いは情報の「表し方」にある。
情報を「物理量」で表す場合はアナログ、「数値・記号」で表す場合はデジタルだ。
アナログ体温計とデジタル体温計
体温計を例に、アナログとデジタルの違いを考えてみる。
代表的なアナログ体温計の1つに、「水銀体温計」がある。
水銀体温計は、水銀の体積が温度上昇とともに膨張する現象を利用して、水銀だまりに接続された細い管の中を伸びる水銀を、管の外のメモリで読み取って温度を測定する仕組みになっている。
この場合、水銀体温計から得られる情報は「管の中を伸びる水銀の"長さ"」という物理量であることが分かると思う。
ゆえに、伸びた水銀の長さからメモリを使って温度を読み取るのは、人間の仕事である。
一方、デジタル体温計の場合はどうか。
デジタル体温計にもいくつか種類があるが、一般的な接触式の電子体温計は、温度変化によって電気抵抗値が変化する物質(サーミスタ)を利用し、抵抗値をそれに対応する数値に変換することで、温度を測定・表示する。
この場合、電子体温計から得られる情報は「温度(数値)」だけであることが分かると思う。
ゆえに、人間が物理量を読み取る必要はない。
まとめると、「体温」という情報を物理量で表す水銀体温計は「アナログ」、物理量を数値に変換して表す電子体温計は「デジタル」だと言える。
この世は徹頭徹尾、アナログである
アナログとデジタルは、一見、真逆の概念のように捉えられるが、実際には「アナログの延長線上にあるのがデジタル」だといえる。
なぜなら、どんな「情報」も元をたどれば、結局アナログだからである。
例えばデジタルな電子体温計も、サーミスタを利用して測定した「電気抵抗値」という物理量を、対応する数値に変換しているに過ぎない。
例えばデジタルな映像だって、映像素子を利用して測定した光の「波長」や「強さ」という物理量を、対応する数値や記号に変換しているに過ぎない。
この世は徹頭徹尾、アナログなのである。
アナログよりデジタルの方が優れているのか
冒頭で「アナログ」と「デジタル」に対して抱くイメージについて触れたが、ここまでの説明により、抱いていたイメージが少し変わったと思う。
あくまで主観だが、「アナログとデジタル、どちらが優れているか?」という視点自体が、ナンセンスである。
要は使い方なのである。
「デジタル化」と「アナログ化」の利点
「デジタル化する」とはつまり「アナログ情報を数字・文字・記号※に変換する」ことだ。
情報をデジタル化する利点はいくつかあるが、最大は「コンピューターで扱いやすい点」と「情報が劣化しずらい点」である。(詳細は別記事で述べる)
また、符号化された信号(0と1で表現されたもの)を用いた通信をデジタル通信という。
「アナログ化する」とはつまり「デジタル情報を人間が知覚しやすい物理量に変換する」ことだ。
情報をアナログ化する利点は、ひとえに「人間が知覚しやすい点」である。
また、符号化されていない連続量の信号(電流、電圧など)を用いた通信をアナログ通信という。
映像のデジタル化とアナログ化
例として、映像のデジタル化とアナログ化について考えてみる。
映像をデジタル化した場合「保存・編集・移動」という側面では、アナログに比べてとても便利だ。
映像という視覚情報が文字列に変換されるため、保存や編集はもちろん、インターネットさえあれば、数千キロ離れた場所にでも映像データを送ることができる。
映像をフィルムに記録・複製していた時代と比べれば、大きな利点といえる。
一方、映像がデジタル情報のままでは、当然、何も楽しめない。
デジタル化された情報はコンピュータにとっては都合が良いが、人間にとってはただの文字の羅列であり、なんのこっちゃ分からない。
いわずもがなこれは欠点である。
このように、アナログにはアナログの、デジタルにはデジタルの利点・欠点が存在し、適宜使い分けることが重要だといえる。
アナログとデジタルの違い|まとめ
アナログとデジタルの違いは、物理量をできる限りそのまま扱うか、数値・文字・記号などに変換して扱うかという点にある。
双方に一長一短があるため、適宜使い分けることが重要である。
最終的に、浅いような深いような結論にたどり着いたが、この場合、結論と過程をセットで理解していることが重要なんだぞ。